財務省は11月27日、自民党税制調査会にて、日本国内のカジノで得た勝利金に対し課税するための原案を提示しました。
課税方法については日本国内居住者・海外居住者(訪日外国人)によって分かれ、国内居住者はマイナンバーカードに記録されるプレイ履歴に基づいた課税、訪日外国人は海外の事例に基づいた源泉徴収の導入が検討されています。
仕組み上換金額や勝敗などの記録管理は事業者側で行う必要があることについて、自民党IRプロジェクトチーム・岩屋毅氏は、IR事業者側の負担が増える点について言及。「事業者の投資意欲が減退する」との懸念から、案の撤回を求めています。
日本国内居住者/非居住者への課税方法詳細
今回提出された原案では、日本国内居住者/非居住者は、それぞれ下記の方法で税金が徴収されることが検討されています。
- 国内居住者 入場時に提示するマイナンバーカードに全プレイ履歴を記録。 チップ購入額と退場時のチップ換金額(払戻金)の差額を算出し、一時所得として課税する。
利用者の勝敗をマイナンバーカードに記録することで、カジノで勝った人が負けた人にチップを預け所得を減らすといった不正も防ぐことが可能。
- 国内非居住者(訪日外国人)
所得に対して源泉徴収(※出国後は税務調査が困難となるため)
日本や各国の法律におけるギャンブルと税金
現在日本の法律では、競馬や競輪などの公営ギャンブルにおける当選金は「一時所得」と呼ばれる所得とみなされ課税対象となります。 日本にカジノができた場合も同様に、勝利金が「一時所得」として分類される見込みです。 ギャンブルの勝利金が課税対象となる代表的な国はアメリカが挙げられますが、実は非課税の国の方が多く、中国・シンガポール・ドイツ・オーストラリア・イギリス等では税金がかかりません。
また、ギャンブルが職業となっているプロギャンブラーは課税されないといった場合もあります。
今回の財務省案に対し、IR法案に関わった与党議員から「他国にもそのような(厳しい)制度を採用している例はない」「海外観光客を呼び込むには、国際競争力も重視する必要がある」と問題点を指摘する声が上がっています。
また、IR専門家として知られる東洋大学・佐々木一彰教授も「日本のIR制度は既に世界最高水準の厳しさ」であることに触れ、IR事業者が日本から撤退する恐れがあるとの懸念を示しています。
党内では他国の例として、アメリカにおける国内非居住者の源泉徴収が【1ゲーム5,000ドル以上、または300倍以上の大当たり】のみが対象となっている事例を踏まえ、1ゲームの中で一定以上の大きな勝ちのみを課税対象とするべきとの意見も上がっています。
最終的な決定は令和3年度の税制改正にて行われる予定ですが、党内や専門家からの懸念の声も多く、今後の税制改正では主要な議題となることが予想されます。